麻疹(はしか)とは
麻疹とは、麻疹ウイルスの感染により発症するものです。
麻疹の感染経路
空気感染(飛沫核感染)により感染を起こします。
感染力が強く、全員が免疫を持たない集団の中で1人の患者が発生した場合、12~18人の二次感染者を引き起こす可能性があるとされます。
麻疹の抗体検査
麻疹の抗体検査は、血液中に麻疹ウイルスに対する 免疫グロブリン(IgG) が存在するかを調べる検査です。この抗体が一定の量以上あれば、過去に麻疹に感染したか、またはワクチンを接種して免疫を獲得していることを示します。
EIA法の場合の基準値(例)
- 陰性(-):抗体がなく、免疫がない(ワクチン接種または感染歴なし)
- 低抗体価(±または+):抗体が少なく、免疫が十分でない可能性がある
- 陽性(++以上):抗体があり、免疫がある
検査を受けた後の対応
そもそもワクチン接種歴がない方は抗体価の測定は不要です。2回のワクチン接種を行ってください。
免疫がないと判定された場合
- ワクチンを接種する ことが推奨されます。
- 麻疹ワクチンは MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン) または 麻疹単独ワクチン があります。
抗体価が低い場合
- ワクチン接種の追加 を検討する(特に医療従事者や妊娠を考えている人は重要)
(以前にワクチン接種歴があると考えられるので1回の接種でよいと判断します。)
免疫があると判定された場合
追加のワクチン接種は不要です。
麻疹の抗体検査費用
費用(税込) | |
麻疹抗体検査 | 3,300円 |
当院で実施しておりますのでご相談ください。
麻疹のワクチン接種
ワクチンは生涯で2回の接種が推奨されています。予防接種の有効性は高く、1回接種による免疫獲得率は93~95%以上、2回接種による免疫獲得率は97~99%以上と報告されています。
一方で、予防接種としても抗体が得られないprimary vaccine failureが数%ではあるが認められるとされ、ワクチン接種後も時間経過とともに免疫力が低下するsecondary vaccine failureもあります。
費用(税込 | |
ワクチン接種費用 | 9,900円 |
(麻疹単独のワクチンが入手できないので、麻疹風疹ワクチンとなり9,900円とします。)
麻疹の疫学
ワクチンの効果で小児の発症は低下し、流行の中心となる年代は高齢になっています。
日本の2008年に発生した麻疹患者の20歳以上の割合は33.2%であったが、2019年には71%まで上昇しました。
20代以降の麻疹ワクチン接種回数が1回である者が30~70%であるという報告や、トラベルクリニックにおいて海外渡航前の40代では未接種者が45.8%、1回接種者が39.6%であったという報告もあります。
2015年3月に日本は世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から麻疹の排除状態にある国として認定を受けました。
しかしながら、麻疹は完全に排除されたわけではなく、2019年は排除認定後最多の744人を記録しています。
その後、COVID-19感染の広がりにより海外との行き来が制限されたため、
- 2020年は10人
- 2021年は6人
- 2022年は6人
と麻疹の発症数は減少していたものの、最近では
- 2023年は28人
- 2024年は45人
2025年3月28日までに32人の発症が確認されており、罹患数が増加してきています。
COVID-19流行下で、多くの国で麻疹ワクチンの接種率の低下が生じた結果、麻疹が再興感染症として増加してきている可能性が考えられています。
麻疹の潜伏期間および感染力
8~12日間の潜伏期間を経て発症します。
発疹出現の4日前から発疹出現後4~6日間にわたって感染力を有します。
麻疹の症状
肺炎や中耳炎などを合併することがあり、小児と比べて成人では重篤化しやすいと言われる。
症状は、カタル期、発疹期、回復期の3つの時期に分けられる。
カタル期
鼻汁、咳嗽、結膜炎といったカタル症状から始まります。
カタル期は3~4日程度持続し、その期間がもっとも感染力が高いとされます。
カタル期の最後(発疹出現の1~2日前頃)に口腔粘膜にコプリック斑が出現します。
コプリック斑は発疹出現後2日程度で消退します。
発疹期
発疹は、顔面、耳の後部から始まり、体幹、四肢に広がる発疹を認めます。
発疹は融合傾向を示すが、健常皮膚面を残すのが特徴です。
最終的には発疹は暗赤色となり消退していきます。
手掌には通常発疹は認めらないことや、指圧により発疹が退色するのが特徴といわれます。
発疹と麻疹の違い
風疹は顔面に皮疹が出た後に24時間後には全身に皮疹が広がるが、麻疹の場合には皮疹が広がるまで2,3日を要します。
回復期
発症8日目頃から解熱しはじめ、発疹も徐々に消退していきます。
皮疹は軽症の場合、4~5日で改善してくるが、7日を過ぎて皮疹が消退しはじめる場合もあります。
麻疹の発熱症状
発疹の出現する前後で体温が1℃程度低下するため、2峰性の発熱を呈すると言われている。発疹が全身に広がる頃には39℃を超える発熱となる。
麻疹の診断
発疹が出現して初めて麻疹を疑われることになるが、発疹出現時には麻疹特異的IgM抗体がまだ陰性のことが多いです。
麻疹の治療
麻疹に特異的な抗ウイルス薬は無く、対症療法となります。
麻疹に感染した場合の登校について
学校保健安全法では、学校の出席停止は解熱後3日を経過するまでとされています。
麻疹ワクチンの副作用
ワクチン接種後、小児ではリンパ節が腫れることがあるが、成人では頭痛や関節痛が起こることが多く、皮疹を生じることもあります。全身反応は弱毒化されたウイルスが増殖して起こるため、接種後7~12日後に起こることが多いです。
修飾麻疹
ワクチン接種後の麻疹の発症の場合は、非典型的な症状となるため診断がより難しくなるとされ、修飾麻疹と言われます。カタル症状がなかったり、皮疹が限局したり、麻疹の診断は困難となります。
当院として伝えたいこと
- 麻疹は流行しつつあります。
- 治療法は対症療法のみです。
- 成人では症状が重篤化することがあるので、ワクチン接種歴が分かる方で、未接種もしくは1回の接種で終了されている方は2回目の接種をした方が良いと考えています。
- ワクチンの接種歴の分からない方は、麻疹の抗体価を測定して、免疫能が乏しいと判断された方にはワクチン接種が望ましと考えています。
ワクチンもなかなか手に入りにくくなっておりますので当院へ早めにご相談ください。