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溶血性貧血

溶血性貧血とは

溶血性貧血とは全身に酸素を供給する役割を持つ赤血球が減少する状態を貧血といいます。赤血球が不足すると、体内の組織に酸素が十分に届かなくなり、息切れやめまいなどの症状が現れます。
溶血性貧血は、赤血球が通常よりも早く破壊されてしまう状態です。溶血により赤血球から放出されたヘモグロビンは、肝臓でビリルビンに変換されます。ヘモグロビンの分解によって生成されるビリルビンは、まず間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)として血液中に流れ、肝臓に運ばれます。肝臓では、ビリルビンが抱合されて直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変わり、胆汁として腸に分泌されます。
腸内では、ビリルビンは腸内細菌によってウロビリノーゲンに変換され、これが再吸収されるか、尿として排泄されます。したがって、溶血性貧血が進行すると、血中の間接ビリルビンが増加し、黄疸の症状が現れます。直接ビリルビンも増加するため、尿中のウロビリノーゲン量が増加して、尿が濃くなります。また、肝障害があると肝臓で再利用できるウロビリノーゲンが少なくなるため、ウロビリノーゲンの尿中排泄が多くなります。
先天的な原因としては遺伝性球状赤血球症やサラセミアが、後天的なものには自己免疫性溶血性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症が代表的です。


溶血性貧血の原因

溶血性貧血の原因は、先天性(遺伝性)と後天性に大きく分けられます。

先天性(遺伝性)溶血性貧血

先天性の溶血性貧血は、遺伝子異常が原因で赤血球が異常な形や構造を持ち、脆くなり破壊されやすい状態です。

遺伝性球状赤血球症

赤血球の細胞膜に異常があるため、赤血球が通常の円盤状ではなく球状になります。球状赤血球は脾臓を通過するときに捕捉され、結果として溶血が進行します。遺伝性球状赤血球症の症状としては、貧血、黄疸(眼球や皮膚が黄色くなる)、脾腫(脾臓の腫れ)などがあります。また、胆石症を合併することがあります。

サラセミア

ヘモグロビンの異常により、赤血球膜が傷害されて赤血球が早期に破壊される疾患です。サラセミアには主に2つのタイプ(αサラセミアとβサラセミア)があり、それぞれ特定の遺伝子の異常によって引き起こされます。重症例では、出生直後から貧血が進行し、輸血が必要になることもあります。

鎌状赤血球症

鎌状赤血球症は、ヘモグロビンの異常によって赤血球が鎌のような形状になる病気です。鎌状の赤血球は、毛細血管に詰まりやすく重症の場合は痛みや臓器障害が伴うことがある、慢性的な貧血です。

後天性溶血性貧血

後天性溶血性貧血は、赤血球が正常に作られても、何らかの外的要因により破壊されてしまうものです。

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)

免疫系が自分の赤血球を異物と誤認して攻撃する病気です。自己免疫が原因で抗体が赤血球に結合し、脾臓や肝臓あるいは血管内で破壊されます。温式抗体と冷式抗体(寒冷凝集素)の2つがあり、温度によって抗体が働くメカニズムが異なります。AIHAは、感染症、薬剤などが引き金になることもあります。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)

骨髄の造血幹細胞の異常が原因で、赤血球の膜が脆弱になり、補体という体内の防御システムによって赤血球が破壊されてしまう病気です。特に夜間に溶血が進行しやすく、尿が赤褐色(ヘモグロビン尿)になることが特徴です。溶血(ヘモグロビン尿)に加えて、血栓症(血の塊ができる)や骨髄不全症候群を伴うことがあります。

薬剤や化学物質による溶血性貧血

ペニシリンやフルダラビンなど一部の薬剤や化学物質によって溶血が誘発されることがあります。

その他(機械的破壊)

人工心臓弁によって、血液が物理的に損傷を受け、赤血球が破壊されることがあります。


溶血性貧血の症状

溶血性貧血における症状は、赤血球の破壊が進むことにより体内の酸素運搬能力が低下し、さまざまな臓器や組織に影響を及ぼすため、多岐にわたります。

貧血症状

息切れ

酸素供給が不十分になるため、軽い運動や日常生活でも息切れが感じられることがあります。特に階段の上り下りや歩行時に顕著に現れます。

息切れ

疲労感

常に疲労感を感じることがあり、体力が低下します。何をするにも気力が出ず、日常生活に支障をきたすことがあります。

めまい・ふらつき

脳への酸素供給不足により、めまいや立ちくらみが起こることがあります。

めまい

黄疸

赤血球が破壊されると、ビリルビンという物質が生成され、血中濃度が上昇します。このビリルビンが肝臓で処理されきれず、皮膚や眼球が黄色くなることを「黄疸」と呼びます。黄疸が進行すると、全身が黄色く見えることがあります。

褐色尿

溶血が進行すると、破壊された赤血球から放出されたヘモグロビンが尿中に排出されます。これにより尿の色が赤褐色になることがあります。

胆石

溶血性貧血によって生成されたビリルビンの過剰が、胆石の原因となることがあります。特に、溶血が続くとビリルビンが胆のう内に沈着し、胆石が形成される可能性が高くなります。胆石があると、腹痛を引き起こすことがあります。

その他の症状

脾腫

脾臓は古くなった赤血球を捕捉して処理する臓器です。溶血性貧血で肝機能が亢進すると、肝臓が腫大することがあります。脾腫は、腹部の圧迫感を伴うことがあります。

心拍数の増加

酸素供給の低下を補おうと心臓が働き、心拍数が増加することがあります。これにより、動悸や不整脈が感じられることがあります。


溶血性貧血の検査

赤血球が破壊される(溶血する)とヘモグロビン濃度が低下します。赤血球の外にでたヘモグロビンは生体には毒となるためハプトグロビンが結合します。そのため、溶血性貧血ではハプトグロビンが低下します。また、体は貧血を補うため赤血球造血を亢進させるので網状赤血球が増加することになります。溶血の結果として、ビリルビン値が上昇します。
自己免疫性溶血性貧血では基本的に直接クームス試験が陽性となります。抗赤血球自己抗体の反応指摘温度によって温式自己免疫性溶血性貧血と寒冷凝集素症に区分されます。


溶血性貧血の治療方法

自己免疫性溶血性貧血にはステロイドによる治療が推奨されています。二次治療として脾臓摘出術(脾摘)が保険適用となっています。脾摘後は有する細菌に対する易感染性が懸念されるため髄膜炎菌や肺炎球菌に対するワクチン接種が推奨されます。寒冷凝集素症の場合には寒冷を回避することが何よりも重要であり、特に四肢や皮膚の露出部が冷えないようにすることが重要です。ステロイドの有用性は乏しく、副作用も懸念されるため、投与しないことが望ましいとされています。重篤な場合には、スチムリマブ(エジャイモ)の投与が検討されることもあります。脾摘同様に、髄膜炎菌や肺炎球菌に対するワクチン接種が推奨されます。また、貧血の改善は期待されますが、末梢循環の改善は期待できません。